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津地方裁判所 昭和29年(ワ)41号 判決

原告 青山新七郎

被告 国

訴訟代理人 宇佐見初男 外三名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、被告は原告に対し金四百九十九万六千二百十八円及びその内金二百二十万三千二百五十二円に対する昭和三十一年十二月二十二日より右支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は、大正十年六月財団法人高田慈光院主事に就任し、昭和十八年二月同院々長に就任したものであるが、昭和二十二年十二月二十三日午後七時三十分突如津警察署勤務司法警察吏巡査部長清水源道により三重県河芸郡一身田町大字一身田二百七九六番地の原告居宅において逮捕せられ、直ちに同警察署に留置、同月三十日津地方検察庁藤検事より業務上横領翠として津地方裁判所に起訴せられ、更に昭和二十三年二月三日同検事より遺棄罪として追起訴せられ、これがため原告は右逮捕以後昭和二十三年二月十九日保釈せられるまで五十九日間刑事被告人として三重刑務所に拘禁せられた。

二、原告が起訴せられた公訴事実については、昭和二十三年二月十九日津地方裁判所において業務上横領罪並びに遺棄罪として懲役二年に処せられたが、昭和二十四年十二月二十七日名古屋高等裁判所においては、遺棄罪は無罪、業務上横領罪として懲役十月、但し三年間右刑の執行を猶予する旨の判決を受けた。

然し原告はこれに対しても不服であつたので更に上告したところ、昭和二十六年一月二十五日最高裁判所において、原判決を破棄し、事件を名古屋高等裁判所へ差戻す旨の判決があり、差戻後の名古屋高等裁判所においては、昭和二十六年八月六日業務上横領の点につき無罪の判決をなし、ここに原告に対する公訴事実はすべて無罪であることに確定した。

三、原告に対する右逮捕は、三重県軍政隊軍政部ワード大尉の指令に基き昭和二十二年十二月二十三日午後四時四十分津地方検察庁藤検事より津警察署長に対し電話を以つて、「貴管内一身田所在の養老院々長上島真吉、同副院長永井某の両名は共謀して収容老人に食事を与えず、そのうち二、三名を、死せしめたとの情報が軍政部よりあつたから調査のうえ報告されたい」との指揮連絡をなしたので、これに基き前記巡査部長清水源道は右藤検事の指揮連絡に示されていない原告を「地位を利用して収容者の受配物資を横領した容疑による」として何等緊急逮捕の要件を具備せざるにかかわらず昭和二十二年十二月二十三日午後七時三十分原告を緊急逮捕したものである。なお同巡査部長は原告を逮捕するに当り、原告に対しその保管にかかる慈光院の庶務会計に関する帳簿書類の提出を求め、これを行李二個に入れて持参することを命じたので、原告は已むなく右帳簿書類を行李二個におさめて津警察署に持参した。

四、津警察署司法警察官服部正一は充分なる捜査をなすことなく犯罪の嫌疑なきにかかわらず、原告に業務上横領、背任、脅迫の被疑事実があるものとして、昭和二十二年十二月二十九日津地方検察庁検事に事件送致をなし、同検察庁検事山本稜威雄及び同藤直道は起訴するに足る犯罪の嫌疑なきにかかわらず前記の如く業務上横領並びに遺棄の公訴事実につき原告を起訴し、亀山簡易裁判所判事都築一馬は右公訴事件につき審判する権限なきにかかわらず昭和二十三年一月十二日及び同月十九日の二回に亘り津地方裁判所法延において原告に対する右刑事被告事件につき審理をなし、これによつて原告の勾留期間を長からしめ、津地方裁判所裁判官生貝隆は第一審裁判官として、右亀山簡易裁判所判事都築一馬が公判手続において取調べた第一回及び第三回公判調書中の原告の供述記載を他の証拠と共に右公訴事実に対する総合認定の資料として使用し、重大なる過失を犯し、又原告の任意性なき検事調書における自白を唯一の証拠として右公訴事実を認定して有罪の判決をなし、更に破棄差戻前の名古屋高等裁判所裁判長堀内斉も津地方裁判所と同様の過誤を犯し、事実を誤認して原告に対し有罪の判決をなした。

五、以上の原告に対する逮捕、事件送致、起訴並びに判決はいずれも原告に犯罪事実がないのに、司法警察官吏、検察官及び裁判官がその職務を行うに当り故意又は過失により違法に原告の権利を侵害したものである。

しかして原告は右違法行為により次のごとき損害を蒙つた。

(1)  裁判費用金十三万三千九百七十七円。但し別紙計算書のとおり。

(2)  原告が高田慈光院長として得べかりし利益の喪失金三百十八万八千六百四十一円。

原告は本件刑事被告事件のため高田慈光院長を失職したが、若しこれを失職しなかつたならば、原告は高田慈光院長として昭和二十三年一月(失職時)より昭和二十九年三月(本訴提起時)までの間に諸給与金六十六万八千九百円を、昭和二十九年四月より昭和三十一年十一月までの間に同じく諸給与金六十三万二千円をそれぞれ得た筈であり、又昭和三十一年十二月より原告の平均余命のある昭和四十二年十二月までに原告が高田慈光院長として得べかりし諸給与は金二百九十二万六千円であるから、これを年五分の利率によりホフマン式計算法により計算すれば、右金員の現在額は金百八十八万七千七百四十一円である。以上合計金三百十八万八千六百四十一円が原告が諸給与として得べかりし利益の喪失額である。

(3)  原告が退職金として得べかりし利益の喪失金二十七万三千二百二十五円。

但し原告が高田慈光院に就職した大正十年六月より、原告が死亡により退職すべきものと見るべき昭和四十二年十二月までの間四十七年六カ月(計算上四十七カ年とする)間の勤続により原告が退職の際受くべかりし退職金四十一万六千円(高田慈光院の退職金内規により定められた退職時の給与月額の百分の四十に在職年数を乗じた金額)を年五分の利率によりホフマン式計算法により計算した右金額の現在額。

(4)  原告及び原告の家族が本件刑事被告事件のため社会的に葬られ、あらゆる地位と名誉とを失つた精神的、肉体的苦痛に対する慰藉料金百四十万三百七十五円。

よつて被告に対し国家賠償法第一条に基き以上合計金四百九十九万六千二百十八円及びそのうち既に発生した損害である裁判費用金十三万三千九百七十七円、諸給与金六十六万八千九百円慰藉料金百四十万三百七十五円、以上合計金二百二十万三千二百五十二円に対しては昭和三十一年十二月二十二日以降右支払ずみに至るまで年五分の割合による遅延損害金の各支払を求めるため本訴請求に及んだ、と陳述し、原告は本件刑事被告事件につき刑事補償法に基き昭和二十七年三月二十四日刑事補償金一万七千七百円の交付を受けたと述べ、被告主張の如く原告が昭和二十六年十月十六日司法書士の認可を受け爾来これに従事していることは認める、と述べた。

被告指定代理人は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として、原告主張事実中、原告の経歴及び原告主張の損害の点はいずれも不知、原告が本当に拘禁されたことその他司法警察官吏、検察官、及び裁判官に違法行為並びにそれについての故意、過失があつたことはすべて否認する。原告主張のごとき逮捕、事件送致、起訴及び判決があつたことは次の点を除きすべて認める。原告を業務上横領として起訴したのは検事山本稜威雄であり、遺棄として原告を追起訴したのは検事藤直道でその追起訴の日は昭和二十三年一月十四日である。又検事藤直道より津警察署長に対して指揮連絡のあつたのは昭和二十二年十二月二十三日午後三時四十分である。司法警察官が検察官に事件送致をしたのは昭和二十二年十二月三十日であり、右送致をなしたものは服部正一ではなくして司法警察官矢代勝弥である。原告を逮捕するに至つたのは津警察署長矢代勝弥が昭和二十二年十二月二十三日、三重軍政部ワード大尉より、原告及び訴外長井徳次郎がそれぞれの地位を利用して慈光院収容者の受配物資を横領しているから、両名を彊ちに検挙留置せよとの指令を受け、相当な資料に基いた右ワード大尉からの聞込みによつて同人等が業務上横領している疑が充分にあり、又同署長は直ちに一身田派出所巡査部長に原告の横領の関係を内査させ、その報告結果を綜合したうえ、原告が横領していると疑うに足りる充分な理由があると認め、且つ右事件は軍政部からの指令に基くもので急速を要するし、更に原告が主宰している慈光院内部のあつれき等から見て証拠湮滅、逃走の虞れもあつて急速を要し、裁判官の逮捕状を得ることができなかつたので日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律(以下刑訴応急措置法と略称する)第八条第一項第二号に基き巡査部長清水源道をして緊急逮捕せしめたものである。

仮りに原告が右刑事々件につき拘禁せられたため損害を蒙つたとしても、原告は既に昭和二十二年十二月二十三日(緊急逮捕せられた日)より昭和二十三年二月十九日(保釈せられた日)までの五十九日間の被拘禁日数に応じ一日金三百円の割合による刑事補償金一万七千七百円の交付を受けているから、これによつて原告の損害は補填せられているものである。なお原告は昭和二十六年十月十六日司法書士の認可を受け、爾来同業に従事しているものであると述べた。(被告は以上の外種々法律上の意見を述べているが、これは事実に摘示することを省略する)。

当事者双方の立証並びに認否〈省略〉

理由

(一)  原告が昭和二十二年十二月二十三日午後七時三十分司法警察吏清水源道により緊急逮捕されたことは本件当事者間に争いがない。然し、右緊急逮捕が刑訴応急措置法第八条第一項第二号の要件を具備していたことについては、成立に争いのない乙第二号証及び証人服部正一、同矢代勝弥、同平岡裕太郎の各証言によるもこれを認めるに足らず、他に右要件が具備していたことを認めるに足る充分の証拠はない。然らば原告に対する右緊急逮捕は違法であつたものといわなければならない。しかして捜査法規に精通する司法警察官吏が、緊急逮捕の要件が具備しないのにかかわらずこれをなしたことは、何等反証のない本件においては当該司法警察官吏の故意叉は過失に基くものと推認することができる。

然し成立に争いのない乙第十号証によれば司法警察官服部正一は昭和二十二年十二月二十四日上島益吉より事情を聴取してその聴取書を作成していることが認められ、同聴取書の記載によれば、原告が業務上横領の罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることが認められる。然らば司法警察官が右上島益吉の聴取書を作成したこれを資料として裁判官の通常逮捕状を請求し、これによつて原告を逮捕すれば何等違法はなかつたわけである。即ち原告に対する逮捕は逮捕当時の昭和二十二年十一月二十三日にはその要件が具備していなかつたけれども翌二十四日には通常逮捕の方法によればこれをなし得る可能性があつたわけである。しかして成立に争いのない乙第四号証によれば昭和二十二年十二月二十四日裁判官坂本収二によつて逮捕状が発せられていることが認められるから、同日以後は原告に対する逮捕は適法になつたものと解すべきである。蓋し、逮捕状が発せられたからと云つてそれ以前の緊急逮捕が常に適法となるものではないが、少くとも逮捕状が発せられた後の逮捕(拘禁)は適法であると解すべきであるからである。然らば原告に対する緊急逮捕による違法行為は結局一日の不当拘禁という結果になる。

(二)  司法警察官服部正一が原告に対する業務上横領、背任、及び脅迫の事実につき昭和二十二年十二月二十九日意見書を作成したことは本件当事者間に争いがなく、成立に争いのない乙第十四号証によれば、司法警察官矢代勝弥は昭和二十二年十二月三十日原告に対する業務上横領、背任、脅迫の被疑事件を検察官に送致した事実が認められるが、司法警察官が犯罪を捜査した結果、これに関する意見書を上司に提出することは何等違法ではなく、又司法警察官が捜査した被疑事件を検察官に送致するのは当然のことであつて何等違法ではない。(司法警察職務規範第百十一条)

(三)  検察官が業務上横領及び遺棄の事実につき原告を起訴したことは当事者間に争いのないところであるが、検察官は犯罪事実につき公判手続において有罪の判決を得る見込(蓋然性)あるときは当該被疑者を起訴し得るものであつて、しかして成立に争いのない乙第六ないし第十一号証、同第十三号証の一、同第二十五ないし第三十八号証及び証人山本稜威雄、同藤直道の各証言を総合すれば、検察官が捜査段階において集取した証拠によつて、原告に業務上横領及び遺棄の犯罪事実があり、且つこれにつき有罪判決を得る可能性あるものと客観的な嫌疑を有するに至つたこと及びその嫌疑を有するに至つたことについては相当な理由があることが認められる。従つて右検察官の起訴は何等違法ではない。

(四)  亀山簡易裁判所判事都築一馬が原告に対する前記刑事被告事件につき昭和二十三年一月十二日及び同月十九日の二回に亘り審理をなしたこと及び同裁判官に右事件を審判する権限がなかつたことはいずれも本件当事者間に争いのないところであるから、右審理は違法であるというべきであり、而して同裁判官が右事件につき審判権限ありと誤信したことは、何等反証なき本件においては、同裁判官の過失に基くものであると推認する々相当とする。蓋し裁判官は法律に関する専門家であり、裁判官として用うべき通常の注意を払つたならば当然亀山簡易裁判所判事が津地方裁判所に起訴せられた右事件を審判する権限のないことを知り得た筈であるからである。

しかして右都築裁判官がなした右審理のために原告に対する刑事被告事件の審理及び未決勾留が長引いたと思料せられる日数は昭和二十三年一月十二日より津地方裁判所裁判官生貝隆が第三回公判を開いた昭和二十三年二月四日までの二十三日間であることが認められる。

(五)  原告は第一審裁判官が右都築裁判官の審理した第一回及び第三回公判調書における原告の供述記載を証拠にしたり、或は任意性なき原告の検察官に対する供述調書を証拠として公訴事実を認定したと主張するが、成立に争いのない甲第二号証(第一審判決書)によれば原告主張の如き事実がないことが認められるから(第三回公判調書は都築裁判官の審理した公判調書でないことは成立に争いのない乙第十九号証によつて明らかである)これ以上第一審判決の当否を判断する必要を認めない。

(六)  成立に争いのない甲第三号証及び乙第十七ないし第十九号証を総合すれば破棄差戻前の第二審裁判官は、原告に対する公訴事実を認定するに当り、証拠能力なき都築裁判官の第一回公判調書中の原告の供述記載を証拠としたことが認められるから、これは訴訟法上違法であり、そしてその違法な判決は同裁判官の過失に基くものと解するを相当とする。蓋し裁判官が訴訟法の適用を誤ることは裁判官として用うべき通常の注意を払わなかつたことに基因するものと解し得るからである。

然し原告が昭和二十三年二月十九日、第一審判決言渡と同時に保釈せられたことは当事者間に争いのないところであるから、右第二審裁判官が前記過誤を犯したことによつて、原告の未決勾留には何等影響を及ぼさなかつたことが明らかである。

但し、右第二審裁判官の過誤により訴訟が長引きそれによつて原告が損害を受けたことは否定することができない。

なお原告は右第二審裁判官が事実の認定を誤つたと主張するが、成立に争いのない甲第三号証、乙第十七号証及び同第十九号証を総合すれば、第二審裁判官が事実の認定を誤つたのは、原告の横領金額を金二万九千五十六円七十銭とすべきを金二万九千五百五十六円七十銭と認定しただけのことであることが認められる。若し第二審裁判所が第一審の第一回公判調書中の原告の供述記載を証拠とせず、第一審の第三回公判調書中の原告の供述記載(これも第二審判決の証拠となつている)のみを証拠として原告の横領金額を金二万九千五十六円七十銭と認定しておれば何等訴訟法違背もなく、従つて上告審において破棄されることもなかつたわけである。然しそれは兎も角として、第二審裁判所が原告の横領金額を五百円多く認定したからと云つてそれによつて原告の権利が不当に侵害されたとは到底認め難い。

(七)  以上認定の如く原告に対する刑事被告事件における違法並びにこれに基く原告の権利侵害は、

(1)  通常逮捕の手続に出すべきものを緊急逮捕の処置に出でたことの違法及びそれによる原告に対する一日の不当拘禁。

(2)  裁判官都築一馬が公判審理になした違法及びそれに基く原告の未決勾留第二十三日間の延引。

(3)  第二審裁判官が証拠能力のない証拠を事実認定の資料としたことの違法及びこれに基く訴訟の延引。

の三点である。

原告は、原告に対する刑事被告事件が最後に無罪になつたから、それまでの逮捕、事件送致、起訴、第一、二審の有罪判決がすべて違法であると主張するものの如くであるが、刑事訴訟手続(捜査を含めて)はその個々の行為が違法でなければ、結果の如何にかかわらず、その行為は違法ではない。例えば起訴が適法であれば、仮令無罪の判決があつても、その起訴は違法にならず、又第一審判決があつても、その起訴は違法にならず、又第一審判決が訴訟法並びに実体法上適法であれば第二審において破棄されても第一審判決は違法にならない。事実の認定は検察官及び裁判官がそれぞれ独自の立場においてなすことであるから、その認定が異つたとしてもそれは見解の相違であり、一方が適法で他方が違法というものではない。原告が最後に無罪の判決を得たことを根拠にして、それまでのすべての訴訟手続が違法であると主張することは失当である。

(八)  よつて右違法な手続によつて原告が蒙つた損害について案ずるに、原告が昭和二十二年十二月二十三日から昭和二十三年二月十九日までの全拘禁期間に対し刑事補償法により一日金三百円の割合による刑事補償金一万七千七百円の交付を受けたことは本件当事者間に争いのないところであるから、前項(1) 及び(2) の事実に基く原告の損害はこれによつて補償せられたものと解するを相当とする。蓋し刑事補償金額は被拘禁者の拘禁による財産的損害及び精神的苦痛を斟酌して算定された金額であると解すべきであり、それ以外に特別の損害が発生したことを認めるに足る証拠がないからである。

前項(3) の事実に基く損害については、原告に対する刑事被告事件が上告審において破棄差戻の判決がなされたため、再び名古屋高等裁判所において審理せられることとなり、そのため原告が訴訟追行上種々の出費を要したであろうことはこれを推測するに難くないけれども、その金額については原告が何等立証しないところであるからこれを認めるに由がない。

原告は裁判費用、得べかりし利益の喪失、慰藉料等を損害として、本訴においてその賠償を請求しているが、これ等はいずれも、逮捕、起訴、第一、二審の有罪判決がすべて違法で原告に対する不当行為であることを前提とするものであるが、右訴訟手続は前記些細の瑕疵を除いては違法でないこと前記説明のとのりである。従つて原告の右損害賠償の請求が失当であることは言を俟たない。

(九)  以上の理由によつて原告の本訴請求はすべて失当としてこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用したうえ主文のとおり判決する。

(裁判官 松本重美 田中良二 西川豊長)

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